改正貸金業規制法の公布による上限金利の引き下げは、過度な金利負担が、借り手を債務返済のための新たな借金に追い込む負の連鎖を防止する効果があり、政府の多重債務問題対策の中核です。
しかし、上限金利の引き下げは、高金利の代わりに、借り手の返済能力の審査(与信)基準を緩めていた、貸し手側の金融機関の融資姿勢にも変更を迫ることになります。与信基準が厳しくなることで、お金を借りられなくなったり、借りているお金の早期返済を求められたりするケースが出てくることが予想されるわけです。
そうなれば、金融機関の新たな基準で融資を受けにくくなった人の資金調達ニーズは、甘い与信を誘い水とする悪質な無登録業者(ヤミ金融)に向かう恐れがあり、新たな多重債務発生の温床にもなりかねません。
多重債務者対策本部は、こうした貸金業法改正で想定される波及影響に対し、適切な借り手保護の仕組みを構築することが狙いです。
全国信用情報センター連合会によると消費者金融の利用者は約1400万人。国民の8・5人のうち1人が消費者金融からお金を借りている計算です。しかも5件以上利用者は約230万人に上っています。自己破産者も10年前から4倍強膨らみ約18・4万人(2005年)に達しています。
この実態を踏まえ、有識者会議は2月から、債務者へのカウンセリング(相談)体制の充実とセーフティーネット(安全網)の2テーマを中心に検討を進める予定です。
現状のカウンセラー不足は深刻で、5件以上借りている230万人に対し、対応できる専門のカウンセラーは30万人分にしか過ぎません。さらに、有識者会議の委員の宇都宮健児弁護士は「多重債務者をカウンセリング機関に誘導する工夫も課題だ」と指摘しています。早期のカウンセリングが問題解決に役立つ半面、自らの借金について第三者への相談に踏み切れない債務者も多いからです。
一方、セーフティーネットについては、政府系金融機関による低金利融資などが選択肢となります。ただ、返済能力の低い特定の借り手の資金ニーズに、どこまで公が関与する必要があるのかなど課題は多く、早急に実現するものではありません。